2014年12月18日木曜日

ゲスト:TAHITI80




今週は、Tahiti80のボーカルのXavier Boyer(グザヴィエ・ボワイエ)さんと
ドラムスのRaphaël Léger(ラファエル・レジェ)さんをゲストにお迎えしました。

まずは、リスナーからの届いた質問から。

Q:TAHITI80ってどういう意味なのですか?
A:TAHITIはフランスの島の名前で、80は数字の80だよ。
ある日、父がTAHITIと書いたTシャツを着ていたんだ。
それを見て「あぁいいね!」ということになって名前を付けたんだよ。

Q:お休みの日は何をしているのですか?
A:ミュージシャンって大体休みの日は、次の曲はどんなのにしよう?とか情報収集をしていることが多いよね。それか、リラックスしながら、なにかアイディアが降りてくるのを待ったりとか。実際には休みらしい休みってないから、ガールフレンドは不機嫌になっちゃうけど。リラックスするときには、みんなと一緒だよ。映画館や美術館に行ったり本を読んだりするね。あと、地方(田舎)に行ったりもする。田舎の海に行って、海をながめることが一番好きかな。自分の気持ちを解放できるし、頭の中も空っぽにできるしね。
ラファエル:僕は森の中が好き。

グザヴィエ:え?木に抱きつくのかい?
ラファエル:そうだよ。木のパワーを感じるんだよ。母なる自然を感じるんだよ!
グザヴィエ:確かに!大人になって気づくことってあるよね。子供のころと違った発見があるよね。
ラファエル:森の中でキノコさがしもするよ。でも大丈夫!まだ毒キノコにあたったことはないから。両親がキノコに詳しくて、おいしいキノコを教えてくれるんだ。(笑)


Q:フランスではクリスマスはどのように過ごすのですか?
A:アメリカのサンクス・ギビングのようなものがフランスにはなくて、一番大きなイベントがクリスマスなんだよ。家族で集まってプレゼントを渡すんだ。いつもクリスマス前になると、プレゼントを渡す人の一覧を作るんだ。プレゼントを選ぶときは、量より質でいい物をあげたいと思っているよ。結構お金使っちゃうんだけどねー。今年、娘にはウクレレをあげようと思っているよ。
あと、ほかの人には日本からのお土産をあげようかなと思ってるよ。
ラファエル:フチ子!僕はフチ子をプレゼントにしようと思っているよ!(笑)




Q:Tahiti80はこのようにデビュー時からずっと英語で歌ってきました。
フランス出身なのになぜ英語で歌うことを決めたのでしょうか?
A:ボサノバはポルトガル語、サルサはスペイン語、シャンソンはフランス語で歌ったほうが
しっくりくるよね。ポップスもそうなんだ。ポップスはもともとアメリカで生まれた音楽だから英語で歌ったほうがよりグルーブも伝わるんだ。僕らは、フランスバージョンのポップスを演奏するのではなく、本物のポップスを演奏したかった。だから英語で歌っているんだよ。

Q:英語のポップスを聴いて育ったのですか?
A:そうだね。小さいころ、両親と旅行に行った時にボックスに入っているビートルズのカセットを聴いて、とってもショックを受けたんだ。れから音楽が大好きになってね。その頃、英語なんて全然わからなかったから、何度も聴いて勉強したよ。もっともっと深く知りたいと思って、今度はTHE CRUSH(イギリスのバンド)を聴いて、その歌詞から政治的な表現を勉強したんだ。とてもいい英語の勉強になったよ。

Q:Tahiti80の歌詞は、音楽を聴いただけでは習得できないような表現もありますが、
他にはどのように英語を勉強したのですか?大学?
A:学校だね。むちゃくちゃ英語にはまっていたから、高校卒業してから大学で英語を専攻して、アメリカの歴史、文学、詩についても学んだよ。この時の経験が歌詞に生きているんじゃないかと思うよ。

Q:特に作詞の面で一番影響をうけたアーティストはどなたですか?
A:ビートルズ、ビーチボーイズ、ブライアン・ウィルソン(特にハーモニーが好き)、
最近でいうと、アリエル・ピンクかな。聴いていて耳が痛いようなことを歌ったりもしているけど、何か新しいものを生み出そうというときにはとても刺激になるよ。

Q: ニューアルバム「Ballroom」のリード曲である“CRUSH”は

君に振られてからずいぶん経つ
今も僕はその深い闇から抜け出そうと必死なんだ
あぁ あの時Noと言っておけばよかった
成り行きの任せた僕が馬鹿だった

と歌っている振られた男性の気持ちを歌ったナンバーですが、この歌詞のアイディアはどこから?

A:これは、誰かをCRUSHした(傷つけた)のではなく、自分がBeing CRUSHED(傷つけられた)時のことを歌っているナンバーだよ。この主人公は、彼女と別れることになってこれまでのことを後悔しているんだ。そして、相手に対しても「申し訳なかった」と感じている。そんなストーリーの曲だよ。シンプルなラブソングではなく、違ったアングルで愛を表現したいと思って、このような歌詞にしたんだよ。

Q: 主人公は、失恋から立ち直ったのでしょうか?
A: うん。もう主人公は前ほど彼女のことを好きではなくなっていて少しずつ立ち直っているよ。それもこの曲のコンセプト(メッセージ)の一つだね。

Q:T.D.Kというナンバーが収録されていますが、このタイトルはどんな意味?
A:TDKThey don’t know.(彼らにはわからない)という意味だよ。この曲はKristin McCoyの曲がベースになっているんだけど、前にイギリスの新聞“ガーディアン”がこの曲を取り上げていて、どんな曲だろうって聴いてみたら、とっても素晴らしくてさ!今まで聴いた曲の中で一番だったんだよ。聴くたびにこの曲のヴァイブスと歌詞に気持ちが揺さぶられるんだ。だから、自分でもカバーしてみようと思って、PCを開いて、ドラムやベースをプログラミングしたんだ。でも、ちゃんとしたコードが見つからなくって色々試してみたんだよ。だから、TDK(彼らにはわからない)というタイトルにしたんだ。Kristin McCoyは本当に素晴らしいアーティストだよ。

Q;TDKではどんなことを歌っているのですか?
CRUSH”と同じように、恋人が別れてしまったということを歌っているよ。
今回は、恋人を振ってしまった男性の視点で歌詞を書いたんだ。それを表現したのがこの部分。“I became good at lyring(僕は嘘がうまくなった)”“You did your best to believe in me(君は必死にその嘘を信じてくれたね)”“When I was trying(僕が嘘をつこうとしたとき)”“You kept acting like you didn’t see (君はその嘘に気づいていないふりをしたね)”と、恋人同士の心のうちを歌っているんだ。途中、歌詞の内容に合わせてドラムをなくしてオルガンだけにしている部分があるんだけど、そこは僕の告白の部分なんだよ。

Q: Missingはどんな曲ですか?
ケン・スコットというエンジニアが、彼がプロデュースしたバンドについて書いた本があって、その中にいなくなった人のことについて書いてある章があって、それがとても興味深くて、インターネットで調べてみたんだ。そうしたら、ある曲が検索でひっかかってそのビートを使ってプログラミングしたんだ。5分くらいかな、即興でビートをつくったんだ。
歌詞は、僕らと音楽の関係性について歌ったよ。子供のころ歌詞はわからないけど音楽を聴いて心動いた、そんなことを歌っている。音楽を聴いて感動するのと人に恋をするのは似ているね。

Q:今回は私生活を歌詞にした曲が多いとのこと。このように私生活での出来事を歌詞にすることはありますか?
A:TAHITI80のファーストアルバムは、まだ若かったということもあって
ファンタジーな、架空の出来事を歌った歌詞ばかりだった。でも、僕らもいろんな経験を経て、今は、なるべく正直に自分のことを歌詞にしようとしているよ。フィクションっぽいものもあるけど、ストーリーの中に意味があるんだよ。

Q:確かに、今回のアルバムには意味深で、奥深くて、また暗い歌詞も多かったように思います。
A:そうだね。確かに僕らの音楽はいつも物悲しいんだよね。実際、メロディの中でもメジャーセブンのコードを使ってブルーな感じを出したりしている。リズムはアップビートだけど、歌詞も全然明るくないしね。今は、僕が体験してきたことが皆にも伝わるような、共感してもらえるような形に変えて歌詞にしているんだ。だから、アルバム「Ballroom」を聴けば、誰もが“こういう体験したことある!”って、感じてもらえると思うんだ。
さっき紹介した“CRUSH”もそうだし、“Love by numbers”って曲もそう。 
全部、歌詞がリンクしているんだよ。まさに、そこが今までにアルバムと違うところだね。

Q:TAHITI80の意味深で奥深い歌詞は日本人の心にも通じるところがあります。日本人と感情の面でリンクしているなぁと感じることはありますか?
A:日本人もフランス人と同じように芸術作品が好きでしょう?デザインとか。雑誌の表紙を見てもとても芸術的だし、コンビニに売っている商品のデザインもアーティスティックで素晴らしい。フランスのパッケージは日本ほど凝っていないけれど、間違いなく同じような芸術性を持っていると思う。あと、音楽面で言うと、フランス人と日本人から見ればポップスは“外国”の音楽だよね。だから、僕らは同じ感覚でポップスを聴いていると思う。アメリカ人やイギリス人と同じ環境でポップスを聴いてきたわけではないからね。僕らにとっては、とてもミステリアスな音楽だよね。
あと、日本人はソフトな音楽が好きだよね。もちろん、色んな音楽が好きだと思うけど・・・。
実は、僕が名古屋のホテルに泊まった時、ベッドに置いてあった小さなラジオから60年代~70年代のソフトロックがずっと流れていたんだけど、僕が大好きな曲ばかり選曲されているんだよ。とっても嬉しくてね。これが日本なんだよね。文化は全く違うけれど、いつも日本に来ると元気になる。日本には感謝しているよ。